記憶の手がかりとなる声と音・・・
声や音(音声)は人間の記憶に重要な役割を果たしている。個々の思い出や感触を喚起する音声は、流動的でありながら、感動を呼び、また相互の交流や共感を導き、生命の経験や価値観の共有を生み出すこともある。
「きく・みる:声と音の記憶特別展」では、音声にスポットを当て、従来とは異なる歴史記憶の方法について考えてみたい。「音声」を導きの糸として、様々な音声作品や行動者の観点から、多彩な台湾を探索、音声が伝える歴史的メッセージや文化理解を感じてみたい。これは現代の歴史記憶保存に対する省察の展示でもある。私たちは、サウンドスケープ、インタビュー、ラジオ、レコード、楽曲等多元的な音声記録を用いて、過去のある時、個人または集団の記憶を記録しているが、こうした現在進行形で消失、変化、誕生している音声が伝えるメッセージを、我々はどのように理解することができるのであろうか。人にとって重要な存在とは何か、追求すべき文化的価値とは?
1.サウンド/スケープ、音声は記憶を数珠つなぎにする
今朝最初に聞いた音声を覚えているだろうか?
たえず浴びせられる様々な音声から、脳内に浮かぶのはどのような光景だろうか?音声は数珠のように記憶の中の風景を繋ぎ合わせる。目を閉じて、音声の力を感じてみよう。
2. 話し/理解する、音声の中の物語を感じる
大事な時、特別な思い出にまつわる音声を覚えているだろうか?
6つの音声作品は、人々の「過去」、「現在」、「未来」が生み出す心境、思い出、希望を記録している。祭りに参加する人々の心の声、グローバル規模の疾病から生まれた共鳴、小さな町特有の独特な訛り、外国人労働者の歌声、難解な古の調べ、喧騒のなかにある安寧の声等。様々な音声に耳を傾けることで、見落とされてきた音声の重要性や価値に気づくことができるのだ。
●燃え上がる声:祭りの火が、伝統と現代が融合したメロディーを奏でる?(范欽慧、洪永鑫)
●あなたの、わたしの、あの人のCovid-19の声:様々なサウンドスケープがいかに世界を繋げるのか?(中央ラジオ局、Georgios Varoutsos)
●安平訛り:古き訛りが過去の記憶を召喚?(李維睦、呉燦政、呉佳霓)
●褒歌の秘密:楽曲に隠されているのは誰の体験?(黄裕元)
●異郷の外国人労働者の声:歌に込められた自由への渇望とは?(呉庭寛、藍雨楨)
●25デシベルの静けさ:静謐の中にある万物の声(台湾サウンドスケープ協会)
3. 喚/起する、音声の発掘者
あなたも音声で歴史を記憶するだろうか?
音声は流動的であるため、ある場面や時代を特徴化することは難しい。だが、共作によって、集団の感情や精神を表現することは可能だ。台湾には文化的な価値観から、様々なサウンドスケープを収集する人々がいる。音声を保存、「音声によって過去を記録する」行動を通じて、「人々にとって重要なことは何か?」を考える縁としている。彼らが集めた音声が、私達を異なる未来へと導いてくれるだろう。
●環境×教育:台湾サウンドスケープ協会
●世界×台湾:中央ラジオ局
●古い歌×保存:国立台湾歴史博物館
●記憶×物語:小さな島の文化
●サウンドスケープ×体験:目目文創工作室
●古い調べ×クリエイティブ:ロケットマン実験室
4.きく/みる、あなたのあの一瞬
記憶の中で最も印象に残っている音声はなんだろうか?
母が口ずさむ歌声?恋人のささやき?子供時代のはしゃぎ声?こうした音声が、繋がりあった糸のように、生活の中のかけがえのない時間を織りあげる。