台湾史関連視聴覚資料
台史博では、各界から日本時代、戦後の歴史的視聴覚資料の寄贈を受け、それを修復出版しており、その成果は映像業界、学界から注目されています。また、国立東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所などの台湾関連視聴覚資料を所蔵する機関に、資料の利用、研究などの協力協議を働きかけてきました。こうした成果は現在、当館で閲覧することができます。
- 1.当館所蔵フィルムのデジタル化の成果
台史博では、早期の劇場用映画フィルム(175本)、上映許可証(138枚)ならびに各界から寄贈された各種映像資料を所蔵しており、修復、デジタル化した影像資料を出版してきました。最初に出版したのは『片格転動間的台湾顯影』(2008年)で、日本統治時代の「南進台湾」、「国民道場」、「台湾勤行報国青年隊」、嘉南大圳の無声宣伝映画「幸福な農民」の4本のドキュメンタリーフィルムが収録されています。続いて『全台湾:一九三0年代台湾紀錄影片選輯(DVD)』(2018年)が出版され、「全台湾」、「守護台湾」、「台南神社神苑落成奉告祭及大祭実況」、および個人撮影の16ミリフィルム「昭和十二年後龍公学校運動会」が収録されています。
こうした映像は当館で視聴可能で、特に「南進台湾」、「全台湾」は1930年代の台湾各地の様子が数多く記録されており、各界から好評を得ています。歴史ドキュメンタリー、関連映像分野入門の重要な材料といえるでしょう。
『片格転動間的台湾顯影:国立台湾歴史博物館修復館蔵日治時期紀錄影片成果』、台南市:国立台湾歴史博物館、2008年。
『全台湾:一九三0年代台湾紀錄影片選輯』、台南市:国立台湾歴史博物館、2018。
- 2.東京外国語大学台湾関連視聴覚資料:浅井恵倫デジタルコレクション
本館では、国立東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所所蔵の台湾関連資料を所蔵しています。主に日本統治時代の言語学者浅井恵倫(1895₋1969)が台湾各地で収集した資料で、内訳は、写真2,100枚、レコードを録音したMP3ファイル255点、無声フィルム18本です。音声映像資料は当館のパソコンで閲覧、鑑賞が可能です。
浅井は1930年代に先住民族の言語、歌謡の録音作業を行いました。台湾南部では、嘉義、台南、高雄の山地部を中心とする、ツォウ族、シラヤ族、タイボアン族、ブヌン族、カナカナブ族、ラオロア族、下三社のルカイ族、屏東県霧台のルカイ族等を対象に、また、台湾東部では、アミ族、クバラン族、蘭嶼のタオ族のものが録音されています。また新竹、苗栗一帯のタオカス族、サイシャット族、宜蘭一帯のバサイ族のものもあります。浅井のフィールドワークは、当時伝承が危ぶまれていた言語について行われ、歌謡文化や祭儀方式など、現在では失われたり形が変わっているものも多く、学術的な価値だけではなく先住民族の文化復興にも大きな意味を持っています。
台南大内頭社、公廨前の尪姨(巫女)と祭壇。浅井恵倫撮影、1930。