メインのコンテンツブロックにジャンプします

国‧民‧住‧宅:台湾の現代住宅と社会 特別展

  • 開催日:2020-12-28
  • 終了日:2021-05-30

"家を持ちたい "というのは、頑張って働いている人が、よりよい生活を求めていだく夢です。街に立ち並ぶマンション広告には、理想の家を持つ幸せいっぱいのイメージがあふれています。

台湾は100年の間に2度も統治者が変わったことで、大きな政治的変化と人の移動があったことから、その都度、新しい近代的な住宅や住宅文化が取り入れられてきました。日本とアメリカの建築様式は、前後して台湾の住宅建築に取り入れられ、融合していきました。戦後、台湾への移住者の定住問題を解決するために、国は国民住宅政策を通して住宅問題を緩和しようとしました。

1960年代以降、台湾の経済発展が始まり、工業化、都市化が進む中で、台湾の住宅の景観が形作られ、次第に大量に一括生産した住宅が建てられるようになりました。私たちの「家」は、「規格化・量産化」が進むなかで、近代的な建築システムにより都市に建てられた様々な住宅商品へと生まれ変わりました。

今日では、住宅は「住む」という基本的なニーズを満たすだけでなく、財産形成の投資対象となったことで住宅価格の高騰を招き、その結果、高すぎて手が届かなくなるという社会問題が生み出されています。

「家が欲しい」というのはいつから実現不可能な夢になってしまい、なぜ家を持つことが難しくなったのでしょうか。

特別展では、今の台湾の住宅問題に焦点を当てています。戦時中から戦後にかけての台湾社会の変遷における歴史的背景とその動きを検証し、反省的な視点から皆さまと一緒にこれからの住まいの新しい展開についての対話を繰り広げたいと願っています。

国の方針:住まいと社会の変遷
百年来、住宅は国の統治者が変わるのにともない、近代化の歴史を刻んできました。 国が「家」を正式に公共的なもの、特に公営住宅を政策としたとき、私たちの「家」は政治、経済、社会の動きや変化とともに、近代生活が新たな姿に変容するなかに取り込まれ、家庭や社会構造は国の政策の下に変化していくこととなりました。
民間の参入:商品としての家
工業化と都市化が進む中、公営住宅の供給量が住宅需要をまかないきれなくなり、国が土地、資金、技術等の政策を通して民間企業の住宅建設業への参入を促したことで、新たな産業が生まれました。 経済発展と資本主義の下、「家」をめぐるビジネスモデルや商品化は定型化し、住宅は「住む」という基本的なものから、ムード、デザイン、美観、センスに訴える「商品」へと姿を変えていきました。
住まいの変異:市場の計算VS.「居住権」の保障
政策の変化や市場競争の結果、「住まい」はもはや単純なものではなく、都市部の住宅建設は不動産市場の諸条件に左右されるようになりました。「住まい」は、利益の有無で取引されるようになり、それは、現実と理想の間で足したり引いたりする、難解な数学の問題のようになっていきました。持ち家へのハードルが上がるなか、居住権をめぐる社会運動が生まれ、少しずつ変化への路が切り開かれています。
住まい:理想の家

いつから「安住のすみか」を求める気持ちは経済的なプレッシャーを常に伴うようになり、「持ち家」はかなわぬ夢になってしまったのでしょうか。

現代の社会において、住宅へのニーズを構築し囲い込む言説とはいったい何なのでしょうか。

今回の特別展では、様々な住宅問題を提起することで、この島の住宅のこれからのあり方への想像を掻き立て、皆さまとともに住宅の多元的な可能性について探っていくことができればと願っています。

プロローグ「家。流動と安住:台湾住宅建築の一風景特別展」

家、それは密やかな領域。

それでいて、国家制度や国際情勢の影響も受けてしまう。

家は、人や環境、外敵との闘いの中から生まれた知恵の集積。

また、現代的な法制度のもとに管理されてもいる。

台湾を振り返って見れば、その住宅建築のDNAとはどのようなものなのか。

その形式と概念は、現代社会の変遷をどのように嵌め込み、包み込んでいるのか?

この島の住宅建築の一風景、それはまた魂の安らぎの場を探し求める文化考古学的な旅でもある。