当館収蔵の一本マスト手漕ぎ船は台南安平の浅水域環境で生まれ、林家が三代にわたり帆を張り、竿をさし、塩を運びました。伝統的な水運事業の重要な手段であり、また人々と水上に張り巡らされた物流網をつなぐものでした。その後、地理と社会環境の変化によって、船は貨物の代わりにこの土地の歴史と物語、人々の記憶を載せることになりました。国立台湾博物館はこの船の波止場となり、現代に生きる「船の生活史」を語り続けます。
これまで、時代の変遷に連れ浮き沈みがあり、船が積んだ品物も変わり続けてきました。しかし、台湾人が水と共存してきた100年の歴史と経験はここに結晶し、人々の記憶と固く結びついています。そして、この手漕ぎ船のような船は台湾各地に存在し、人々のために貨物と、思い出と、歴史を読み解く手がかりを載せています。それは私達にとって感動と希望に等しいものです。
それぞれの船が持つ生活史は、私たち自身の物語でもあるのです。