1.命運と運勢
運命がどうなるのか?古来より人々はその答えを探し求めてきました。歌手阿吉仔の「運命のギター」、バンド旺福の「一人半分」は、「なぜ人より運が悪いのか」、「運命は人それぞれ、運がいい人もいれば、悪い人もいる」、「運命は天任せ」と歌ってきました。人の運命は定められたものなのでしょうか?変えることはできないのでしょうか?「運命」を見きわめ未来を変えるために、人々は様々な占い方法を編み出してきました。超自然的な力によって恋愛、婚姻、出産、学業、仕事、出世、金銭、健康、人間関係等の悩みの答えを見つけ出そうとしたのです。占いは日常生活の一部として、文化、社会、時代、階層によって、それぞれ異なる意義、姿を持ってきました。本特別展では占いに関する資料を通じて、占いする人される人、その世界観を展示、その文化的意義について考えてみたいと思います。
2.観察と推測
一般的に占いでは観察と推測が用いられます。ヨーロッパ、東アジア双方にある占星術や紫微斗数等は、推測にもとづいたもので、東アジアの華人社会特有の風水術や、人相手相、米占い等は観察に属する占い術です。
3.神のお告げ
祖霊、神様、霊魂等超自然的な力から、運命に関するお告げを受けるのは、もう一つの占い方法です。ギリシャやローマ文化、キリスト教の伝統など、神のお告げ、啓示による予言はヨーロッパの文明に見られる未来予測術です。同様に、中国古代の甲骨文や、また今日の台湾でも人々はお廟等に行きおみくじを引いたり、ポエを投げたり(三日月型のポエを二つ投げて行う占い)、乩童、鸞生、尪姨、巫師等(いずれも霊媒師、口寄せの類)に尋ねたりします。そのほか、台湾の原住民のように、祖霊との対話によって、神のお告げを求める例もあります。寺廟等の宗教施設が、人々が救いを求める場所になっているのです。
4.運勢大逆転
占いで運命や未来の予測を知った人々が、その運勢を変えるために用いる方法には、ヨーロッパ、台湾共通のものがあります。お守りや魔除け、ラッキーアイテムを身につけたり、飾ったりすることです。台湾の漢人社会では道教の影響から、平安符、治病符、鎮宅符等のお守り、剣獅、山海鎮、風獅爺、石敢當等の魔除けがよく見られます。ヨーロッパには動物、植物、宝石で作られたお守りがあります。また悪運を振り払うために、台湾では法師や道士による「祭解」(補運、改運とも呼ばれる)の儀式を行い、個人や家庭の厄除けをすることもあります。一般的なのは、紙で作った人形に身替りになってもらう方法です。ほかにも白虎紙銭、天狗紙銭、五鬼紙銭等、紙銭を使って厄払いをする方法もあります。
5.占い師の人たち
俗に「運の悪い人ほど占いが好き」、「占い師は口はうまいがでたらめだ」、「占いで調子のいいことを言わないと、商売にならない」などと言われますが、占いをする側とされる側に対して人々が持つイメージをよく言い当てています。占い師は神のお告げの代弁者として、各種兆候を読み解き、相談者が満足する回答を導き出します。けれども、ヨーロッパでも台湾でも、彼/彼女の社会的地位は決して高くなく、教会や政府、知識人たちの批判の的にもなります。ところが批判する側も、占い師の意見を求めることがあったのです。日本植民地時代の台湾人知識人張麗俊、林献堂、呉新栄は、占いに対する見方はそれぞれ違いましたが、それでも占いは彼らや当時の社会の日常生活の中に深く根付いていたのです。今日の台湾でも、安太歳(厄年)、占いや姓名判断をしたことのある人が多いはずです。占いに対する人々の興味は現在も不変なのです。
6.占いとゲーム
占いによる未来予測は、一種のリスクアセスメントで、サイコロやトランプなどギャンブルのような確率に関わるゲーム、娯楽、社交的一面もあります。典型的なのが19世紀に流行したタロットです。カードを用いて質問に答え、自己の潜在意識を解析するのです。台湾にも趣旨の似た烏卦籤牌というものがあります。
科学技術の発展によって、占いもオンライン化、ゲーム化し、運勢の解読も占い師の専売特許ではなくなりました。予測の結果が個人の性格や自己表現を表す方法にもなっています。占いは、癒しの効果だけでなく、社交の媒介にもなりました。社会が目まぐるしく移り変わる今日にあって、自分、自分と自然、人間関係を知り、心の安らぎを求める手軽な手段になっているのです。
さあ、皆さんは何を占いますか?
占いの答えをどう受け止めますか?