国立故宮博物院(故宮)、国立台湾博物館(台博館)、国立台湾歴史博物館(台史博)の三つの博物館が共同開催する展覧とは? 各館のコレクションは正に台湾歴史上の三大主役――先住民(台博館)、漢民族(台史博)及び中国宮廷/官府(故宮)の歴史と物質文化に関するものであり、それぞれ特色の異なる収蔵品から果たしてどんな共同展が企画され、どのような対話がなされるのでしょうか。対立し合うようにも見える三つの視点から、台湾の多様な種族が繰り広げる出会い、接触、交流の過程、及びそれぞれの豊かな物質文化の内包を相照らすと共に、歴史と物質文化の探索と対話を通じて過去と現代の生活を繋ぎ、現代における多様性と包容性への理解と想像を広げていきます。三館による合同展、それは先住民と漢民族と官府が交わり、また現代に出会う場なのです。
食卓の記憶
先住民、漢民族、宮廷の食器が大集合!故宮からは天下を轟かす「満漢全席」、これに対して台史博は百年前の高級台湾料理店「江山楼」、台博館はパゼッヘ族岸裡社の潘家とパイワン族貴族の食器、タオ族の皿で応戦。果たしてあなたの食欲をそそるのは?
驚きの喫煙具
喫煙は体に有害ですが、ニコチンがやめられないという人もいれば、喫煙具の美しさに夢中になる人もいます。故宮が収蔵する精緻な鼻煙壷、台博館のユニークな造形の先住民のパイプ、台史博所蔵の身分を象徴した漢民族のキセルなど、数々の美しい喫煙具は煙草をたしなまない者まで虜にします。
酒を手に談笑
酒は招宴、祭祀、打ち上げ、同盟締結、誕生祝い、披露宴など様々なシーンで飲まれるほか、病を治す薬にもなります。だからこそ人は酒を飲むときのセレモニー感を大切にするのです。飲酒にそこまでのこだわりがあれば酒器も自ずと重要となり、その形や機能も実に多様です。このコーナーでは先住民、漢民族、官府の角度から酒器を展示し、各種酒器が持つ異なる物質文化と飲酒への考え方をご紹介します。ただし酒のちゃんぽんは酔いやすいのでご注意を!また、「乗るなら飲むな、飲むなら乗るな」を守りましょう。
美しく華やかに
ファッション、美しい身なりと化粧、きらびやかな宝飾品。デパートのセールを彷彿させるここは、三館が収蔵する先住民、漢民族、宮廷の人々のファッションコーナー。清代皇室に愛されたルビーやサファイヤ、エメラルド、瑠璃玉を連ねた先住民の美しい多重の首飾り、漢民族が身に付けていた「翠玉金蝴蝶歩揺」などを展示しています。
情欲の世界
故宮が所蔵する嫁入り道具箱の底にしまわれた「秘戯画」は、清朝後宮に広がる「欲望への想像」へと誘います。台史博は第一部で戦後初期の台湾のエロティックな映画ポスターを展示し、肌を露わにした官能的な大衆的な視覚文化をご紹介。第二部では漢民族社会の妓楼をはじめとする「性的産業」の文物を展示します。台博館は珍しい先住民の彫刻を通じ、先住民族特有の性的情緒をご紹介します。
難解な文字
古朴な味わいの不思議に歪曲した篆書、紙の上で踊り出さんばかりの呪文や神託、舌が絡まりそうなローマ字の綴り。難解な文字に自分の識字能力まで疑ってしまいそうです。これらの「難読文書」はかつて先住民や漢民族、官府が実際に使っていたもので、収蔵する故宮、台博館、台史博は果たしてどのように解読しているのでしょうか?
他者の視線
よそからやって来た他種族に対し、人々は「ステレオタイプ」の印象と想像を抱く傾向があります。その視線に映る他者の姿は実際とどこか違うものの、時に不思議な風情を醸し出すこともあります。故宮所蔵の銅胎画琺瑯器(描画七宝器)に描かれた彫りが深く、高い鼻と栗毛をした片膝をついて礼をする西洋人、台博館の先住民商品ロゴ、観光の記念品、先住民族を象った人形、先住民のエキゾチックな彫刻、台史博が収蔵する19世紀の西洋人による台湾のスケッチ、漢民族が他民族をモチーフにした彫刻など、どれも互いの目に映った他者の姿と想像です。
政治の贈答文化
贈答は時に気持ちを伝えるだけに留まらず、社会的関係の把握や操作のためにも行われます。官界では特定の場面での贈答、または特定身分からの贈り物は、まさに権力政治の駆け引きそのものです。中華帝国は他民族や辺境社会に「贈り物を御賜(恩賜)」、或いは官職を賜ることで中華文化の優越性を示し、人心を籠絡してきました。そして直接的または間接的に皇帝から恩賜を受けた者は、「御賜」の名で種族や一族の地位を高め、贈り物を自らの勢力を示す重要な象徴としました。このコーナーでは各博物館が恩賜文物を通じ、贈答文化における政治学を紐解きます。